記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/9/13
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
コロナ禍による新しい生活様式の影響で、肥満、糖尿病、高尿酸血症(痛風)などの生活習慣病が増加傾向にあるといわれています。予防や改善のために運動を取り入れる人も増えているようですが、尿酸値高めの人が運動するときには、いくつか注意点があります。
今回は、運動が尿酸値にどのように影響するか、尿酸値高めの人は、痛風予防のためにどのような運動をすればいいかについて解説します。
体内のプリン体は、おもに肝臓で分解され尿酸になり、その後、尿や便といっしょに排泄されます。一般的に、1日に体内で作られる尿酸の量は約700mg、排泄される量も同程度とされているため、体内の尿酸の量は一定に保たれています。
なんらかの理由で、体内で作られる尿酸の量が過剰に増加したり、尿酸の排泄量が著しく低下してしまったりすると、体内の尿酸の量を一定に保つことができなくなり、血清尿酸値(尿酸値)が上昇します。
尿酸値の正常値は7.0mg/dl以下であり、尿酸値が7.0mg/dlを超えると高尿酸血症と診断されることがあります。さらに、9.0mg/dlを超えると痛風(痛風発作)になる可能性がかなり高くなり、尿路結石、腎障害、心血管障害、脳血管障害などの合併症のリスクも上昇します。
尿酸値の上昇には遺伝的な要因も関わってきますが、生活習慣などが原因になることが多いです。尿酸値を上昇させる原因には、以下が挙げられます。
適度な運動は、肥満や脂質異常症、高血圧の改善に役立ちます。肥満の人や脂質異常症の人、高血圧の人は高尿酸血症を併発することが多く、発症リスクも高くなります。ストレス解消やそのほかの生活習慣病を予防する意味でも、適度な運動を習慣化することは大切です。
ただし、100kgのベンチプレスのような高負荷の筋肉トレ、100m走などの短時間の激しい運動は、無酸素運動になりやすく、尿酸値を上昇させる原因になります。一方で、適度な有酸素運動は尿酸値に影響がないことがわかっています。尿酸値高めの人は軽く息が切れる程度(会話しながら運動できる程度)の有酸素運動を取り入れるようにしてください。
また、有酸素運動であっても、運動に慣れていない人がいきなり長距離のランニングなどを始めると、自分が思っている以上に身体に負担がかかり、尿酸値が上昇する場合があります。まずは、ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳などの「軽めの有酸素運動」を、1日20分〜60分、週3日程度行うことから始めるようにしましょう。
上述したように高負荷の筋トレは尿酸値を上昇させますので、尿酸値の改善、痛風発作の予防対策としては、有酸素運動が基本となります。すでに高尿酸血症と診断されている人、痛風発作を発症している人は、自己判断で筋トレをしないでください。筋トレを始める前に、必ず医師に相談しましょう。
健康診断や病院の検査などで尿酸値が高めと言われたことがある人も、安易に筋トレを始めると、高尿酸血症への移行や痛風発作の発症につながる可能性があります。
尿酸値の改善にダイエットは役に立ちますが、尿酸値高めの人が基礎代謝を上げようと、高負荷のベンチプレスやスクワットで著しい筋肥大を目指すようなダイエット方法を取り入れることは、あまりおすすめできません。
自重トレーニングや軽めの負荷のウェイトトレーニングであれば問題ない場合もありますが、医師に相談し、許可をもらったうえで始めるほうが良いでしょう。
可能なら、理学療法士や知見のある専門のトレーナーにトレーニングメニューを作ってもらうことをおすすめします。
運動自体が尿酸値を上昇させることもあり、痛風予防、尿酸値改善を目的に運動するときには、注意しなければいけない点がいくつかあります。
これまで説明してきた内容も含めて、尿酸値高めの人が運動するときの注意点を以下にまとめました。
※すでに高尿酸血症の治療を受けている人、痛風発作を発症したことがある人、長期間尿酸値が高い状態が続いている人、健康診断などで受診を指示された人は、必ず医師に相談してください。
すでに説明しているように、痛風予防、尿酸値改善のためには、有酸素運動の習慣化が大切です。速歩き程度のウォーキングなど、軽めの有酸素運動を習慣化しましょう。
雨の日や猛暑の日など、外で運動できないときは、室内で、器具なしでもできる有酸素運動があるので、運動メニューにうまく取り入れてください。
ウォーキングであっても、集中していると呼吸せずに歩いてしまうことがあります。スマートウォッチなど、呼吸数や心拍数、血中酸素濃度を計測できるツールを使うと、自分自身の状態を客観的に管理できるので、適切なペースを守りやすいです。
※スマートウォッチなどのウェアラブル端末は医療機器ではないため、計測値を医療診断に使うことはできません。あくまでも運動時の目安として使ってください。
脱水は、尿酸値を上昇させます。高尿酸血症の改善のためには、毎日2リットル以上の水分をとることが推奨されていますが、運動時はさらに多くの水分を補給する必要があります。
水分は一度にたくさん飲んでも吸収されないので、運動中はこまめに水分を補給しましょう。暑い日に運動するときは、経口補水液などのイオン飲料を用意しておくことをおすすめします(病気の治療で塩分の摂取量を制限されている場合は、必ず医師に相談してください)。
運動経験がある人のなかには、「自分の体力、筋力を過信する人」が一定数見られます。「学生の頃はこれくらい簡単にできていた」「以前運動をしていたときは、このくらいの負荷、ペースでしていた」などの思い込みから、現在の体力、筋力を超えたペースや負荷で運動をしてしまいがちです。
呼吸数や心拍数などの客観的な情報をもとにして、運動のペースや負荷を決めましょう。可能なら、理学療法士や専門のトレーナーなどに指導を依頼することをおすすめします。
痛風発作が起こっているときに運動をすると、症状が悪化します。これは、関節がムズムズする、ピリピリする、しびれがある、ほてる、かゆみがあるといった痛風発作の前兆症状があるときも同様です。
気になる症状があるときは、運動をお休みしましょう。
また、だるい、熱がある、下痢気味など、何らかの不調があるときは、熱中症やケガのリスクが高まります。運動する前に、必ず体調チェックを行いましょう。
※痛風発作と思われる痛み、症状があるのに、まだ病院で検査を受けたことがない人は、早めに整形外科などの医療機関を受診してください。
尿酸値の改善や痛風発作を予防するには、食事や飲酒、ストレス環境などの「生活習慣の見直し」も大切です。
最近は、おうち時間の充実やリモートワークの一般化により、生活習慣が乱れやすくなっているといわれています。
揚げ物、ケーキ、スナック類など、脂っぽい食べものや甘い食べものが多くなっていないか、飲酒量や飲酒回数は増えていないか、急に体重が増えていないか、ストレスを感じる機会や過集中する機会が増えていないか、睡眠時間が少なくなっていたり生活のリズムが崩れたりしていないかなど、毎日の生活をチェックし、問題のある生活習慣を見直すようにしてください。
関連記事:痛風はストレスも原因?尿酸値の上昇を防ぐためできる対策とは?
激しい運動や高負荷のキツイ運動をすると、尿酸値が急激に上昇します。運動は尿酸値の改善に役立ちますが、尿酸値高めの人が激しい運動をすると痛風発作のリスクが高まるので注意が必要です。
尿酸値が高めと言われた人、すでに高尿酸血症で治療している人は、軽めの有酸素運動を習慣化しましょう。
運動経験がある人や運動に慣れてきた人にとっては、少し退屈な運動と感じるかもしれませんが、自分の体力や筋力を過信して運動のペースや負荷を上げてしまうと、痛風発作の痛みで運動できなくなり、運動量がかえって減ってしまうことになります。
尿酸値の改善には時間がかかりますし、一旦改善しても、ふとした油断で再度上昇してしまうこともあります。尿酸値を改善するには、無理のない適度な有酸素運動を、気長に続けることが大切です。スマートウォッチの計測値やトレーナーからの意見など「客観的な情報」を参考にしながら、適切なペース、負荷の運動を習慣化しましょう。
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