記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/26
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
十二指腸は、胃と小腸の間にある部分で、厳密には小腸の一部である消化管です。では、十二指腸球部とは、十二指腸のうちどの部分のことをいうのでしょうか?また、十二指腸球部変形という疾患は重大な疾患なのでしょうか?
十二指腸は、胃の次に繋がっている消化器官で、指12本を横に並べたぐらいの長さという意味で十二指腸という名前がついていますが、実際の長さは25cmほどあり、指12本ぶんよりも少し長い器官です。胃と小腸をつないでいて、胃で消化された食べ物をさらに消化し、空腸に送る役割を担っています。
十二指腸の中間くらいの位置に、胆嚢からつながる胆嚢管と膵臓からつながる膵管の開口部があります。この開口部はファーター乳頭と呼ばれており、胃で消化された食べ物が十二指腸に入ってくると、セクレチンやコレシストキニンなどのホルモンの働きでこの開口部から胆汁と膵液を分泌します。胆汁や膵液が混ぜられた食べ物は、空腸に送られてさらに消化・吸収されていきます。
十二指腸球部とは、胃から十二指腸に出たすぐの場所のことで、玉のように丸く広がって見えるため球部と呼ばれています。この部位はとくに潰瘍が起こりやすい場所で、十二指腸潰瘍が起こる場合は多くはこの場所で起こります。十二指腸潰瘍を発症し、それが気づかないうちに自然治癒すると、その過程で引き攣れが起きたり、組織に傷跡が残ったりします。すると、丸く広がっていた部分が引き攣れや傷によって変形してしまうことがあります。
変形に自覚症状はありませんが、健康診断の際のバリウム検査などで指摘されることがあります。バリウム検査は発泡剤によって胃や十二指腸を空気によって膨らませ、撮影する検査です。そこで、十二指腸球部が変形していてうまく膨らまない場合に見つけやすいのです。しかし、この検査は絶対ではなく、たまたまうまく膨らまなかった場合にも変形に見えてしまうことがあるため、注意が必要です。
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十二指腸球部の変形だけであれば、多くは潰瘍が治った痕のことですから、現在胃の痛みや不快感に悩まされていないのであれば、症状の進行などの心配はありません。しかし、検査で度々変形を指摘される場合には、過去に十二指腸潰瘍を発症して自然治癒した可能性があります。
十二指腸潰瘍は、疾患を発症した人の約9割でピロリ菌が原因であることがわかっています。ピロリ菌は除菌の処置を行わない限り、自然に消滅することはほぼありません。つまり、以前に十二指腸潰瘍にかかっているということは、再発のリスクが高いということです。ですから、何度も変形を指摘される場合、また、変形とともに胃の不快感や胸焼け、痛みなどの症状がある場合は検査を行う必要があります。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍そのものをバリウム検査で診断することはできないため、健康診断や人間ドックなどのバリウム検査で十二指腸球部の変形を指摘された場合、内視鏡検査を受けて確定診断を行う必要があります。
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十二指腸球部変形を診断するためには、内視鏡検査を行います。内視鏡検査では、小指くらいの太さのファイバースコープを口または鼻から消化管へと入れ、食道から胃・十二指腸までの上部消化管と呼ばれる器官の様子を胃カメラによって観察します。
内視鏡検査は、バリウム検査よりも消化管の内部の様子を詳細に観察できるため、病変を早期に発見することができます。X線を使う検査ではないため、被爆の心配もありません。また、内視鏡検査に伴う苦痛を和らげるために、希望により鎮静剤を使うこともあります。
病変を発見した場合、必要に応じて組織を採取し、生検を行います。採取した細胞組織を顕微鏡下で観察し、病変の様子を詳細に観察して疾患の状態や進行具合を判断します。
内視鏡検査の手順の詳細は各施設によって違いがありますが、大まかな流れは以下のとおりです。
検査当日は、胃の中を空っぽにしておく必要があります。そこで、前日の午後9時以降は食事をしない、水以外の飲み物を飲まないことが大切です。また、当日の朝は服薬も禁止ですから、服薬中の人は検査医にどうすればよいか確認しておきましょう。
検査は10〜15分、早い人では5分程度で終了します。力を抜き、リラックスして検査を受けましょう。もし、検査後に気分がすぐれないときや体調の悪化を感じたときは、すぐに医師に相談しましょう。
検査結果は、検査後すぐに撮影した画面を見ながら聞くことができます。組織を採取して生検を行う場合や、ポリープの切除を行う場合などは検査結果を後日聞くこともあります。また、ポリープや組織の切除・採取を行ったときは、刺激の強い食事や飲酒、コーヒーなどは数日間禁止です。医師から指示がありますので、それを守りましょう。
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十二指腸球部変形そのものは、疾患ではありません。主に十二指腸潰瘍が治ったあとの傷痕であると考えられますので、それ以上の疾患の進行などを心配する必要はありません。しかし、十二指腸潰瘍が自然治癒で治っていた場合は、十二指腸潰瘍が再発するリスクがあります。再発予防のためにも、十二指腸球部変形を何度も指摘される場合は一度検査を行っておくと良いでしょう。
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