更年期のホットフラッシュの症状は対処できる?病院での治療方法とおすすめのセルフケア

2021/11/18

前田 裕斗 先生

記事監修医師

前田 裕斗 先生

二宮 英樹 先生

記事監修医師

東大医学部卒、セレオ八王子メディカルクリニック

二宮 英樹 先生

ホットフラッシュは更年期の症状の代表的なものであり、女性の3/4が経験するといわれています。突然カラダが熱くなり、発汗、顔のほてりなどが現れることもあるので、悩みを抱えることも少なくありません。
この記事では、ホットフラッシュの症状の特徴や原因、治療やセルフケアの方法について解説していきます。

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更年期特有の症状、ホットフラッシュの特徴とは?

ホットフラッシュとは、突然の発汗や顔のほてり(紅潮)、のぼせが起こる症状で、更年期障害の特徴的な症状です。更年期に伴う症状は、ほとんどの女性が経験しますが、その症状や重さは人それぞれです。気にならない程度の症状から、仕事や生活していくうえで支障になる程度の症状が現れることがあります。

ホットフラッシュは、閉経前に症状が現れ始めることが多く、一般的には5年程度で治ります。ただし、症状が現れる年齢や期間にも個人差があり、人によっては重い症状が10年以上続くこともあります。20代や30代の若い世代に現れることもあれば、あまり多くはありませんが、70代でホットフラッシュの症状に悩まされている女性もいます。

更年期の症状に個人差があるように、ホットフラッシュの症状である発汗、ほてり、のぼせにも現れ方や感じ方に個人差があります。また、ホットフラッシュ以外の更年期障害の症状(めまい、頭痛、耳鳴り、肩凝り、動悸、手足の冷えやしびれ、生理不順、性交時痛、皮膚の衰え、体のむくみ、抑うつ症状、いらいら、不安など)が併発することもありますので、気になる症状があるときは早めに婦人科を受診することをおすすめします。

ホットフラッシュの症状の例
  • 突然カーっとのぼせたようになる
  • 突然顔や首にほてりを感じる
  • 急に顔が紅潮する
  • 理由もないのに赤面したようになる
  • 手足や腰
  • 気温や室温は高くないのに、大量の汗が出る
  • 涼しいのに汗が止まらない
  • 夜中に大量に汗をかく
  • ドキドキが止まらない など

ホットフラッシュの症状に前触れやきっかけはある?

ホットフラッシュは、基本的には突然起こることが多く、昼夜問わず、前触れなしに起こることも珍しくありません。ホットフラッシュは、きっかけなしに起こることも多いですが、以下がきっかけになることもあります。

  • ストレスを感じたとき
  • お酒やコーヒーを飲んだとき
  • 辛いものを食べたとき

ホットフラッシュが不眠症の原因になることも

ホットフラッシュ自体が、体に大きな害をもたらすことは基本的にはありません。しかし、ホットフラッシュの症状が原因で不眠症を引き起こすことがあるので注意が必要です。

ホットフラッシュの症状は、睡眠中に突然起こることがあります。本来、睡眠中は自律神経のバランスが正常に保たれている「体が最もリラックスした状態」になっていますが、更年期障害が起こっているときは睡眠中でも自律神経のバランスが乱れやすくなるため、ホットフラッシュも起こりやすくなります。

睡眠中にホットフラッシュによる発汗やのぼせなどの症状が起こると、非常に寝苦しい思いをします。ホットフラッシュの症状が重かったり、長く続いたりすることが原因で睡眠が妨げられることになり、不眠へと発展することがあります。

睡眠中のホットフラッシュの症状が重症であったり、回数が多かったり、長時間続いたりすると、不眠症も深刻なものになっていきます。ホットフラッシュの症状とそれに伴う不調は、適切な治療と生活習慣を見直し改善できる場合もありますので、早めに医師に相談、対策することをおすすめします。

ホットフラッシュの原因は?

ホットフラッシュなどの更年期障害の症状は、おもに更年期である閉経前後の女性に起こります更年期には、閉経に伴って女性ホルモン(エストロゲン)の量が不安定になり、やがて減少していくなかで、様々な症状があらわれます。ホットフラッシュは、エストロゲンが低下して、体温調節がうまくいかないことが原因で起きると考えられています。

また、喫煙している人、肥満の人、運動不足の人は、ホットフラッシュを起こしやすいといわれています。なお、乳がんで化学療法や内分泌療法を受けると、エストロゲンが低下してホットフラッシュの症状に悩まされることがありますが、治療に伴うホットフラッシュは、治療終了後しばらくすると症状が改善していくことが多いです。

別の病気の可能性もあるので注意

ホットフラッシュは更年期によくある症状で、基本的には無害なものです。しかし、ごくまれに血液のがんやカルチノイド(神経内分泌腫瘍の一種)の兆候として、似た症状が現れることがあります。ホットフラッシュの症状に加えて、疲労、衰弱、体重減少、下痢のような体調不良が起こっている場合は、医師に相談してください。

ホットフラッシュの治療方法 ― 治療は絶対に必要?

ホットフラッシュは、症状が軽ければ治療する必要はありません。時間が経つにつれて、症状は改善します。ホットフラッシュの症状が重い場合、ホットフラッシュの症状で日常生活に支障をきたしている場合、ホットフラッシュの症状で不眠症などの他の不調を引き起こしている場合は、早めに婦人科の医師に相談してください。ホットフラッシュの代表的な治療方法は、以下の通りです。

HRT(ホルモン補充療法)

HRT(ホルモン補充療法)は、ホットフラッシュに対して、非常に効果が期待できる治療方法といわれています。ただし、乳がんなどの「ホルモン依存性がん」にかかったことがある人やその既往歴がある人、重度の肝臓疾患がある人は、HRT(ホルモン補充療法)を受けられない場合があります。

受診したときは、現在の心身の状態を伝えることはもちろん、病院で治療を受けている人はその治療内容を、過去に既往歴がある人はその内容をきちんと医師に伝えてください。

サプリ、治療薬

ホットフラッシュの治療では、ビタミンEなどのサプリメントや抗うつ薬などの治療薬(発作の治療に使われるもの)が使われることもあります。なお、診察を受ける前からホットフラッシュの記録(どのくらいの頻度で起きるのか)をつけておくと診察時に役立つことがありますので、用意しておくことをおすすめします。

漢方薬

ホットフラッシュは漢方薬でも改善することがあります。ホットフラッシュで主に使用される漢方薬は、加味逍遥散や温経湯、温清飲などで、ホットフラッシュの後に冷えがある人には桂枝茯苓丸が効果的といわれています。

漢方薬は気・血・水の改善を目的に使われます。漢方ではホットフラッシュは「気」の不調によるものと考えられていることから、漢方薬を選ぶときには「気」に効果があるものが使われることがあります。

ただし、これらの漢方薬の効果は体質によって大きく異なり、症状の改善効果が得られる場合もありますが、漫然と飲み続けると思わぬ副作用が生じることもあります。漢方薬は薬局で処方箋を提示することなく購入することができますが、医師の診察を受けて漢方薬の種類や量をよく相談してから服用開始することをおすすめします。

ホットフラッシュの対処法 ― 自宅でできるセルフケア

ホットフラッシュは、更年期によるホルモンバランスの乱れによるものであるため、食生活を見直して自律神経が整いやすくすることが、結果としてホットフラッシュの改善と予防に役立つこともあります。栄養バランスが整った食生活は、ホットフラッシュだけでなく、閉経後に起こりやすい骨粗しょう症脂質異常症(高脂血症)などの対策にも役立ちます。

栄養バランスが整った和食中心の食事を心がけ、野菜や果物も積極的に摂るようにしましょう。また、大豆製品には女性ホルモンと同じような働きをする大豆イソフラボンが多く含まれています。大豆食品はエクオールの産生にも関わってきますので、納豆や豆腐、豆乳などを食べるようにしましょう。

また、ホットフラッシュの症状は、以下の対処法でコントロールできることがあります。

  • コーヒーや紅茶を飲む量を減らす
  • 飲酒量を減らす
  • よく冷えた飲み物を飲む
  • 禁煙する
  • 部屋を涼しく保つ
  • ほてりやのぼせ、熱が回ってきたと感じたら、冷たい水を入れた霧吹きを顔にスプレーしたり、冷たいジェル・パックを使ったりして冷やす
  • 薄い綿やシルクの服をゆったりと重ね着し、暑くなったらいつでも脱げるようにする
  • 寝室を涼しく保つために、羽毛布団ではなくベッドの上にシーツを何枚か重ね、必要に応じて取り外せるようにする

おわりに:ホットフラッシュの症状は予防、改善が目指せる。医師と相談しながら自分に合う方法を探そう

更年期による症状のひとつ「ホットフラッシュ」には個人差があります。軽い症状であれば治療の必要はありませんが、放置すると不眠症などの別の不調を引き起こすことがあるので注意が必要です。病院での治療方法は複数あり、自宅でできる対処法やセルフケアの種類も豊富です。どの方法が適しているかには個人差があるので、医師と相談しながら自分にあった方法を見つけてください。

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