記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2021/12/9
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
冬は寒さで部屋にこもりがちになり、運動不足になりやすいですが、冬の運動には冬特有のメリットがあります。この記事では、冬に運動することのメリットと冬の運動時のトラブルの予防対策について解説します。冬を元気に乗り越えるための参考にしてください。
生命を維持するための必要最低限のエネルギーを基礎代謝と呼びます。基礎代謝は安静時に代謝されるエネルギー量のことで、1日に消費される総エネルギー量のうち、約60%が基礎代謝によるものです。
骨格筋量が多い人や生活活動強度が高い人はエネルギー消費量が大きくなるので、基礎代謝が高いと考えられます。
性別や年齢、普段の運動習慣によって変わってきますが、一般的に基礎代謝は夏よりも冬に高くなります。これは、寒さのなかでの体温維持のために、より多くの熱を作る必要があるからです。また、気温が低いなかで筋肉を活動させるためには、より多くのエネルギーが必要になることも関係しています。
基礎代謝が高くなる冬に骨格筋量を増やすと基礎代謝はさらに上がり、エネルギーを消費しやすく痩せやすい体づくりにつながります。日常生活での運動強度を高くしたり、運動量を増やしたりすることで、エネルギー消費量はさらに大きくなり、効率よくダイエットすることができます。
冬は、体や生活習慣に変化が出やすい季節です。基礎代謝が上がるだけでなく、下記のような変化が現れることもあります。
寒さによる血管の収縮と血流低下は、血行不良を招きます。血行不良は冷えの原因であり、さまざまな体調不良の原因です。ここに運動不足が加わると、血行不良はさらに進みます。肥満のリスクも高くなるため、糖尿病や高血圧などの生活習慣病リスクも高くなりやすいです。
基礎代謝が上がる冬は、運動の健康効果が出やすい季節とも言えます。毎日の生活に適度な運動を積極的に取り入れ、冬の体調管理に役立てましょう。
ダイエットのためにも健康管理のためにも、冬の運動はおすすめです。しかし、冬は気温が低く、日差しも少ないため、ほかの季節に比べて以下のような「運動時のトラブル」も起こりやすいので注意しましょう。
気温が低いときは、筋肉が冷えて血行が悪くなります。筋肉の柔軟性が低下し、筋肉や関節に負担がかかりやすくため、肉離れや関節炎、捻挫などのケガをしやすくなります。
寒いときは交感神経が緊張して血管が収縮するため、急激な血圧上昇が起こりやすいです。心臓や血管への負担が高まり、狭心症や心筋梗塞などのリスクも高まります。高血圧の人や久しぶりに運動をする人、急に寒さが厳しくなったときなどは注意が必要です。
冷えを感じるときは過去にケガをした部分「古傷」が痛む場合があります。冷えによる血行不良、気圧の変化からくる神経への影響などの要因が考えられます。
冬の寒さで起こる運動トラブルは、寒さと冷えへの対策である程度予防できます。血行をよくすることが重要です。
軽めのジョギング、準備体操、ウォーキングなどの「運動前のウォーミングアップ」を念入りに行い、筋肉をしっかり温めましょう。ウォーミングアップを怠ると、ケガのリスクが上昇します。体を動かすと血流が上がるため、ケガのリスクを抑えられます。
きちんとウォーミングアップできている目安は、「汗ばんでいる」ことです。自分ではウォーミングアップしたつもりでも、筋肉の温度はさほど上がっていない場合があるので、汗ばむまで念入りにウォーミングアップをしましょう。
暖かい室内から屋外へ移動したときの寒暖差は、急激な血圧上昇を招き、ヒートショックを引き起こすことがあります。寒いときに外で運動するときが、室内で軽めのウォーミングアップを行い、体を十分温めてから外出するようにしましょう。
夏に運動すると大量の汗をかくため、体から水分が失われていることを実感しやすいです。しかし、冬の乾燥した空気により水分は常に失われている状態であり、運動時にはさらに水分が失われます。夏と比べて汗をかきにくく、のどの渇きを自覚しにくいため、水分補給もおろそかになりやすいです。
冬も脱水や熱中症のリスクがあるため、夏と同様、水分補給が大切です。運動前、運動中、運動後は意識して水分補給をしてください。また、一度にたくさんの水を飲んでも、体はすぐに吸収できるわけではありません。水分補給は、一気に飲むのではなく、少量の水をこまめに飲むようにしましょう。
水分不足になると疲れを感じやすく、さまざまな不調が起こりやすくなります。高齢者や高血圧の人は脱水状態を引き起こしやすいので、とくに注意してください。
高血圧の人、血圧が高めの人は、運動前に血圧測定をしましょう。血圧が高めの日は運動を休む、高い運動強度のトレーニングは避ける、暖かい室内で運動するなど、無理のないメニューの運動をするようにしてください。
汗をかいて処理をせず放置すると、湿った服が体の熱を奪い、冷えや風邪の原因になります。汗を拭き取る、吸汗速乾性の高い素材を用いた服を着るなど、運動するときはきちんと汗対策をしましょう。インナー、帽子、手袋、靴下、ウィンドブレーカーなどのトレーニングウェアは、冷えにくいものや吸汗速乾性があるものがおすすめです。
冬でも運動開始直後は寒さを感じますが、運動していると体が温まってきます。体温調節をしやすいように薄い素材のウェアを重ね着するようにしてください。
冬は基礎代謝が上がり、エネルギー消費量が高まる季節です。運動の効果を得やすい季節といえますが、寒さによる体の冷えや血行不良の対策をしないまま運動するとケガを招いてしまいます。しっかりと予防対策をして運動を楽しみましょう。