記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
2018/10/8
記事監修医師
MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長 東京大学医学部卒 医学博士日本呼吸器学会認定呼吸器専門医日本内科学会認定総合内科専門医人間ドック学会認定医難病指定医Member of American College of Physicians
山本 康博 先生
高齢者になるとさまざまな疾病のリスクが上がるといわれていますが、なかでも高齢者の低血糖は認知症の発症リスクを上げると考えられています。今回は両者の関連性や、低血糖による認知症を予防するためのポイントなどをお伝えしていきます。
糖尿病が認知症を引き起こすメカニズムは、酸化ストレスや炎症、糖を燃やしたときにできる有害物である「終末糖化産物」などが、脳の神経細胞にダメージを与えるためといわれています。特に食後に血糖値が高くなる食後高血糖が続くとこのような状態になるとされています。
他にも糖尿病は脳の動脈硬化を促進することから、動脈硬化が進んで脳梗塞の発症リスクが高くなることによって血管性認知症になるというのも、糖尿病が認知症を引き起こす誘因とされています。
また、ある調査によると糖尿病の方はそうでない方と比べた結果、アルツハイマー型認知症に糖尿病の方のほうが約1.5倍なりやすく、脳血管性認知症に約2.5倍なりやすいと報告があがっています。また、糖尿病治療の副作用で重症な低血糖が起きると、認知症を引き起こすリスクが高くなるといわれています。糖尿病を発症した場合だけでなく糖尿病の前段階である「耐糖能異常」の場合も、認知症のリスクは高くなるといわれており、糖尿病と認知症には密接な関係があると言っても過言ではありません。
さらに糖尿病患者の場合は脳の前頭葉や頭頂葉などさまざまな部分の血流低下が顕著に見られることによって認知予備能が低下し、発症が早まることも考えられています。
実は高血糖だけでなく、重症の低血糖になった場合でも認知症のリスクが高くなるという研究報告が上がっています。特に薬物療法をしている高齢者ではさまざまな誘因によって血糖値が急激に下がってしまい、低血糖となる可能性が出てきます。そのため、薬物療法をしていない糖尿病の方よりも認知症の発症率がさらに高まってしまうものと考えられます。
高齢者の場合、中高年と異なり年齢や認知機能・身体機能、併存疾患、重症低血糖のリスク、推定される余命などのさまざまな理由から、血糖コントロールの基準を決めることが難しいことが現状です。
65歳未満から血糖コントロールをしている場合にはその値を維持することが多くなりますが、65歳を超えてから血糖値のコントロールが必要になった場合にはその値を精密に設定していく必要があります。そのため血糖の上限だけでなく下限を決める必要があります。
このことから自己判断で血糖コントロールをするのはとても危険となるため、必ず主治医と相談しながら血糖コントロールすることが必要不可欠となります。
一見無関係に思える血糖値と認知症。実はさまざまな研究でこの因果関係の報告が上がっています。血糖が高いだけでなく血糖が低くても認知症を引き起こすリスクは高まるのです。そのため、認知症を予防するためにも血糖コントロールは必要不可欠と言えます。
しかし、高齢者では、血糖コントロールの基準を決めることが難しく、上限だけでなく下限も設定する必要があります。必ず主治医に相談して、医療的な管理を受けながら血糖コントロールをすすめていくようにしましょう。
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