血糖コントロールが糖尿病の症状悪化を防ぐカギ!具体的な方法を解説

2018/10/9

山本 康博 先生

記事監修医師

MYメディカルクリニック横浜みなとみらい 院長
東京大学医学部卒 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医
日本内科学会認定総合内科専門医
人間ドック学会認定医
難病指定医
Member of American College of Physicians

山本 康博 先生

糖尿病と診断されたら、合併症予防のために早急に治療を始めなくてはなりません。
糖尿病対策として行われる治療のほとんどは、血糖コントロールを目的としています。
今回は糖尿病治療の要である「血糖コントロール」について、その必要性や具体的な内容、うまくいかなかった場合に考えられるリスクまで解説していきます。

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血糖コントロールが糖尿病治療で欠かせない理由は?

糖尿病は、血糖値を下げる作用のあるインスリンが何らかの理由でうまく働かなくなり、血液中の糖をうまく代謝できなくなる病気です。
放っておくと慢性的な高血糖状態が続くため、高血糖状態が続かないよう血糖をコントロールしていかなくてはなりません。

一般的な糖尿病治療の血糖コントロールでは、血糖値とHbA1c(エイチビーエーワンシー)の2つに注目し、調整していきます。

血糖値とは

血液に含まれるブドウ糖の量、血液中のブドウ糖濃度のこと。
直近の食事に影響されて変化し、数値が高ければ高いほど高血糖状態であるとわかる。

HbA1cとは

血中でブドウ糖と結合した、赤血球の割合のこと。
直近ではなく過去1~2か月の血糖の状態を表していて、ヘモグロビンに結合するブドウ糖量が多いほどこの数値が高くなり、高血糖状態であることがわかる。

治療においては、長期間の血糖状態を知ることのできるHbA1cの数値が特に重視されます。
血糖コントロールをするにあたり、目指すべき理想的なHbA1cの数値は治療目標によって3つの段階に分けられ、それぞれ以下のようになります。

糖尿病治療の血糖コントロールで目標とすべき、段階別のHbA1c値

血糖正常化を目指す場合
HbA1c値6.0%未満
合併症を予防できる値を目指す場合
HbA1c値7.0%未満
治療強化が困難な数値である場合
HbA1c値8.0%未満

糖尿病が軽度の場合、また最終目標として目指すべきは血糖正常化の数値ですが、患者の状態によってはまず合併症が予防できる値から目指すケースも多いです。

血糖コントロールがうまくいかないとどうなる?

血糖コントロールがうまくいかず、慢性的に血糖値が高い状態が続くと、次第に全身の血管が損傷して以下のような合併症を引き起こします。

血糖コントロール成功の秘けつは食事と運動!

糖尿病治療のための血糖コントロールを成功させるには、食事の習慣を見直す食事療法と、運動習慣を身につける運動療法が欠かせません。
以下に、血糖コントロールに有用として実際に行われている食事療法と運動療法の内容を解説します。

血糖コントロールに効果的な食事療法

その人の体格にあった適性量のエネルギーを、栄養バランスよく摂取することが基本です。
1日当たりの適切な摂取エネルギー量は、以下の計算式で算出できます。

  • 身体活動量×標準体重(身長×身長×22)

なお身長はメートル換算で、身体活動量は座り仕事が多い人なら「25~30」、立ち仕事が多いなら「30~35」、力仕事が多いなら「35以上」を目安に計算します。

例えば座り仕事で身長162cmの人の場合、1日あたりの適性エネルギーは、以下のように計算できます。

  • 例)25×(1.62×1.62×22)=1443.42kcal/1日当たり

また、食事内容と食事を摂るときの食べ方にも工夫が必要です。

3代栄養素をバランスよく摂れるよう、先ほど求めた1日の摂取エネルギー量のうち50~65%が炭水化物、20~30%が脂質、13~30%がタンパク質になるよう心がけましょう。

  • 例)座り仕事の162cmの人の場合、およそ炭水化物で720~930kcal、脂質で280~430kcal、タンパク質で185~430kcalずつ摂取すべきと考えられる。

なお、急激な血糖値の上昇を避けるために食事は1日3回規則正しく、できるだけよく噛みしっかり時間をかけて食べるようにしてください。

血糖コントロールに効果的な運動療法とは

血糖コントロールに有効な運動の目安は「他人とおしゃべりをしながらでも続けられる程度の負荷」です。
具体的には、以下のような運動を1回あたり10~30分程度、週に3~5日以上行うと良いとされています。

  • 8,000~10,000歩を目標とした散歩、またはウォーキング
  • 人と話しても続けられる程度の、ゆっくりとした軽めのジョギング
  • 水中での歩行や、水泳
  • 簡単なストレッチや体操    など

糖尿病の運動療法は、長期間継続して行ってこそ効果を発揮します。食事療法とセットで、体調を見ながら無理のない範囲で始めてみましょう。

血糖コントロールで薬を服用する場合の注意点は?

食事療法と運動療法を続けても血糖値が下がらない場合は、内服薬または注射で血糖コントロールを行うことになります。
糖尿病治療に使われる内服薬と注射薬、それぞれの特徴は以下の通りです。

血糖コントロールに使われる内服薬

インスリンの分泌量や働きを調整したり、また糖の吸収・代謝の速度に働きかけることで、血糖コントロールを目指す薬物です。
さまざまな種類があり、含まれる成分によって作用する臓器・時間・副作用なども異なるため、医師が患者の状態にあわせて適切なものを処方します。

血糖コントロールに使われる注射薬

自分で注射することで血糖コントロールをする、インスリンを使った注射薬です。特にⅠ型糖尿病患者に有効な投与方法で、作用する時間によって超即効型・即効型・中間型・混合型・持続型などの種類があります。
なお、インスリン注射の一部種類では妊婦・胎児への安全性も確認されています。

薬物療法は、食事と運動による血糖コントロールを補助するための治療法です。
薬の利用には副作用もあり、低血糖や合併症の原因となるリスクもあるため、必ず食事療法・運動療法と一緒に継続して行うようにしましょう。

おわりに: 食事療法と運動療法をメインに、血糖コントロールで糖尿病を治療しよう

継尿病の進行と合併症を防ぐため、糖尿病治療には血糖コントロールが欠かせません。具体的には、医師の指導のもと食事と運動の習慣を見直すことで、理想的なHbA1c値に近づけるように調整していきます。薬物で血糖をコントロールする治療法もありますが、これはあくまで補助的なものです。食事と運動療法の継続は欠かせませんので、覚えておいてください。

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